10月4日から始まる「 迫田希久さんの手仕事」展に向けて、作家の迫田希久さんにお話をうかがいました。
白樺との出会い、スウェーデンでの学び、日本での日常に寄り添う工夫まで
その背景にある想いをお届けします。

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<白樺樹皮とともに>
迫田希久さんの手仕事
ー森とつながる素材との出会い
迫田希久さんが白樺樹皮に初めて触れられたのは、家具を学びに行ったスウェーデンでのことでした。竹や木よりもしなやかで扱いやすく、手の中にすっと馴染むやわらかな感触に驚かれたそうです。
スウェーデンでは昔から白樺樹皮はとても身近な素材で、キャニスターや籠、家の屋根材など、暮らしのさまざまな場面で使われていました。
資源が限られる土地だからこそ、人々はこの素材を大切に使い切り、日常の道具に生かしてきました。その姿に心を打たれ、森の恵みを身近に感じながら、この素材と向き合うようになったのです。

ー伝統を受け継ぎ、今の暮らしへ
ものづくりの基盤には、古くから伝わる技法があります。けれど迫田さんは、それをそのまま形にするのではなく、日本とスウェーデン、それぞれの暮らしを思い浮かべながら今に合うかたちを探っておられます。
たとえばバッグは、日本人の感覚に寄り添う大きさや軽さ、持ちやすさを重視されています。伝統を大切にしながらも、日常に自然と馴染むような工夫が作品の中に息づいています。

ースウェーデンで知った自由さ
スウェーデンの手工芸学校での学びは、大きな転機になりました。日本ではものづくりに細やかな決まりごとが多くありますが、スウェーデンではもっと自由でおおらかでした。
装飾のために色を重ねることも受け入れられ、挑戦すること自体が許されていました。もちろん、うまくいかずに終わることもありましたが、その中から思いがけない表情や新しいかたちが生まれることもあります。自由に手を動かすことが、ものづくりの楽しさを広げてくれたのです。
ー家具から日常へと目を向けて
留学の目的は、もともとは家具を学ぶことでした。スウェーデンには多様な家具があり、大きなテーブルを囲んだり、収納を工夫したりと、暮らしに合わせて自由に楽しむ文化が根づいていました。
一方で、日本ではなぜ家具文化が大きく育たなかったのか――その疑問を抱くようになりました。畳の上で過ごす生活、布団やちゃぶ台を出し入れして使う習慣、限られた空間を柔軟に使う知恵。日本の暮らしは、大きな家具がなくても成り立つようにできていました。
その気づきを経て、家具のような大きなものよりも、日本の日常に寄り添う小さな作品づくりこそ、自分にはふさわしいと感じるようになりました。四季の移ろいを受けとめ、湿度や気候に合ったかたちを工夫すること。それが、現在の表現の大切な軸となっています。

ー身につける白樺
当初は、北欧の道具をそのまま日本に紹介したいという思いがありました。しかし、気候や生活の違いを考えると、そのままでは馴染みにくいのではという迷いもありました。
制作を重ねる中で、日本の暮らしに合わせて工夫を加えれば、白樺の魅力をもっと自然に感じていただけると感じるようになりました。
そこから生まれたのが、ポシェットやケースといった「身につけるアイテム」です。毎日の暮らしの中で手に取り、持ち歩けるかたちにすることで、白樺は特別な工芸品ではなく、日常にそっと息づく存在へと広がっていきました。
ー展覧会に寄せて
今回の展覧会では、スウェーデンの風景や暮らしからヒントを得て生まれたオーナメントやファッションアイテムをご紹介します。白樺に初めて触れる方にも手に取っていただきやすく、その魅力を身近に感じていただける作品ばかりです。
日常の中でふと触れたとき、北欧の森や人々の暮らしが思い浮かぶような――そんなひとときを感じていただけたらと願っています。
また今回は、生活の道具にとどまらず、アクセサリーや小さなポシェットなど、身につけて楽しんでいただける作品にも取り組みます。
どうぞ手にとって触れながら、白樺の持つ魅力を感じていただけたら嬉しいです。

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しみこむかたち
迫田希久 白樺樹皮の手仕事展
2025.10.4(Sat)-10.19(Sun)
OPEN|11:00–17:00
CLOSED|Mon & Tue
at 北白川ちせ
京都市左京区北白川別当町28
075-746-5331
スウェーデンで出会った白樺樹皮。
やわらかく手に馴染み、
暮らしをやさしく彩ります。
古くからの手仕事を大切に、
日本の風土に寄り添うかたちへ。
スウェーデンの風景や営みから
ヒントを得て生まれたオーナメントや
ファッションアイテム、かごやケース。
日々にそっと染み込む、
白樺の手仕事をお楽しみください。